睡眠は脳の老廃物除去システム!
2019.03.12
「食べる」「繁殖活動をする」といった動物の行動には、確固たる理由があります。
エネルギーを補給したり子孫を残したりといった、明快で分かりやすい理由です。
ところが、睡眠がなぜ必要なのかという理由については、その重要性について数えきれないほどの研究が行われてきたにもかかわらず、明快な回答がないというのが実情だそうです。
しかし、睡眠を行わなかったマウスは3日で死亡したという実験結果から考えると、睡眠はやはり動物にとって不可欠と言わざるをえません。そして、数多くの研究から、睡眠が認知機能や精神的なバランスといった脳の領域と深く関連があることが明らかになっているのです。
日中にたまった毒素を睡眠によって排除する!
「食べる」ことが体内にエネルギーを取り込むこととは対照的に、「睡眠」は日中に脳内に蓄積した毒素を排除する作用があることがわかって来ました。
脳に蓄積する有害物質のひとつが、アミロイドβです。アミロイドβの蓄積は、アルツハイマー症の発症の要因のひとつと言われています。
つまり、睡眠とは脳の老廃物除去システムであるというわけです。
集中力、学習能力、注意力にも影響を与える睡眠の質
睡眠障害という言葉が闊歩するようになったここ数年、質の良い睡眠がいかに生活の中で大きな割合を占めているかが注目されるようになりました。人間は平均的に、1日の3分の1を睡眠のために費やしています。
質の良い睡眠がもたらす恩恵は、学習能力や集中力、注意力を向上させるだけではなく、認知機能の強化、心理的精神的なバランスの維持、気分の安定化、緊張の緩和、不安感やストレスの軽減など、計り知れないほど多大です。もちろん、睡眠の「質」だけではなく「量」もこうした精神の安定に影響を与えます。通常、2日間連続して睡眠不足になると、日中のパフォーマンスは著しく低下するという結果が出ています。
年齢とともに低下する認知機能、しかし睡眠の質によって個人差が
年齢を重ねれば、認知能力が低下して転倒などを誘発する機能障害の割合が高くなるのはごく自然なことです。しかし、これも睡眠の質や量によって個人差があることが2007年の研究で明らかになっています。
それでは、質の良い睡眠のためにできることとは何なのでしょうか。
農作業やガーデニングが推奨される欧州
2017年、ローマのラ・サピエンツァ大学は、肉体的精神的に健康で100歳を迎える割合が高い南イタリアのチレント地方の調査を実施しました。記憶力、宗教、生活習慣、筋力、握力など細微にわたって調査が行われたのです。
その結果、チレント地方の高齢者は農作業に従事している時間が長いことが特徴として明らかになりました。100歳近くなっても、農作業に関しては現役という人が多かったそうです。
また、英国では医師の処方箋に「ガーデニング」が存在します。ガーデニングだけではなく、ダンスやコーラスなど体を動かすことが、医師によって処方されるようになったのです。これは、健康に年齢を重ねていくことを目的とした英国政府の試みだそうです。
最後に
仕事といえばコンピュータを使ったデスクワーク、移動は車という現代の生活スタイルは、精神的肉体的にさまざまなストレスを与えるだけではなく、動物としてヒトが持つ本来の習性にまで影響を与えているのかもしれません。
「たとえ1日10分でも外気を吸うことは、免疫システムをはじめとする体内のシステムに有益である」。これは、今年になって発表されたアメリカの研究結果です。
寝不足が重なり鬱々とした気分の日は、体を動かしたり外出したりするのもおっくうです。しかしあえて、そんな重苦しい気分をふっきって、散歩に出かけてみましょう!